創作小説「鳳凰はかく語りき ─東華百貨店物語─」

第24回 文学フリマ東京にて頒布します。ブース番号C-16でお待ちしております。

そこは、光にあふれていた。
生まれてはじめて見た光より
なお明るく、輝いていた──。

時は二十世紀初頭の大阪。 心斎橋筋に面する東華百貨店に設置された鳳凰像は、時代とともに移り変わる人々の営みを見つめ続けた。 ある者は人生を一変させる出会いを経験し、またある者は失った信念を取り戻す。やがて時は流れ、鳳凰自身の運命をも変える出来事が起きる──。

百貨店と人々がたどる道を、百年の時をかけて見守る鳳凰が語る連作短編集。

書き下ろし小説として、2017年刊行!

創作小説「鳳凰はかく語りき ─東華百貨店物語─」表紙

1.大正五年

ここはどこだ。なにも見えない。 ただ、白々と明るいだけだ。それにしても、やけに寒い。さっきまでいた、温かい場所へ戻してほしい。わたしがぼんやりとそう思っていると…

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2.大正九年

橋を渡った先には、別世界があった。渡り終えた日比野スミは、初めて見る光景に唖然とした。先を行く千鶴子お嬢さまが「なにぼんやりしてるの、早くいらっしゃいよ」と、

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3.昭和八年 ─光代の場合─

下村光代は、東華百貨店名物の大食堂にて、丸髷を結った頭を抱えていた。ああもう、本当に。どうしてこんなことになってしまったのだろう。よりによって、あんな──。

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4.昭和八年 ─幹也の場合─

伊藤幹也は、自己嫌悪に陥っていた。がっくりとうなだれ、盛大にため息をつく。そんな彼を、向かいに座る友人の下村秀雄が豪快に笑い飛ばした。「落ち込むことはないさ。きみはなんにも

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5.昭和九年

この場へは、一生来るつもりはなかったのに。下村栄造は忸怩たる思いに、うつむいてこぶしを固く握りしめた。可愛い孫のためとはいえ、なんという屈辱だろう。だが、今日はまだ下見だけだ。栄造の眼鏡に

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6.昭和十二~二十年

わたしの記憶では、昭和も十二年を過ぎたあたりから、少しずつ市民生活の中に戦争の影がちらつくようになってきたように思う。とはいえそれは〝遠い世界のどこかで起きているらしい、なんとなくきな臭い情勢〟という

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7.昭和二十年

今日も暑かった。業務を終わらせた住岡友子は、閉店後の売場で人目をはばからず大きな伸びをした。店内は電灯を極端にしぼっていたが、それほど薄暗さは感じない。友子は受持ちの更正品売場を離れ、一階ホー

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8.昭和四十三年

飯田高之は朝八時過ぎに出社すると、まず最初に華子の体調確認からはじめる。機嫌のよい日もあれば、悪い日もある。目の色や毛づや、鳴き声など、一日として同じ日はない。きれい好きな華子のため、園舎の清掃をみっ

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9.昭和六十三年~平成二十八年

その後もわたしは、東華百貨店を見つめつづけた。高度経済成長期を経てバブル経済期に入ったころの東華は、まさに破竹の勢いで売上を伸ばしていた。一流ブランドのスーツが飛ぶように売れ、宝

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10.平成二十九年

年が明けた。こんなに静かな正月は、はじめてだった。毎年元旦こそ定休日であるが、翌二日は初売りに向けての準備で早朝から店内は大

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東華百貨店のご紹介

「鳳凰はかく語りき」は、大阪心斎橋に建てられた架空の百貨店「東華百貨店」を舞台に繰り広げられます。物語には直接関係ありませんが、こんな設定があります。

桐山屋 看板

桐山屋 看板

東華百貨店の前身である桐山呉服店の看板。定紋である「桐に鳳凰」が見える。いわゆる「見立て紋」と呼ばれるデザインで、桐の葉と花を鳳凰に見立てており、ここからシンボルとしての鳳凰が生まれた。

東華百貨店 商標

東華百貨店 商標

海外の百貨店や欧州の紋章がベースになっている。カタカナの「ト」に見えるようデザインされているが、左の空白や右上の斜線に実は意味はなく、季節やイベントごとに柄を入れるなどをして遊び心を持たせた。

包装紙

包装紙

東華百貨店のロゴマークがはいった包装紙は、当時はモダンすぎたきらいはあったが好評だったという。遠目からも判別つくようにオレンジ色を中心に、随所にカタカナの「ト」が入れられている。1970年代に一度廃止されたが2017年に復刻された。百貨店のテーマ花である柘榴の包装紙も人気だった。

杉浦絵里衣

杉浦絵里衣すぎうらえりい

作者

大阪府出身。エンタメ寄りの時代小説や警察小説などを中心に活動中。着物と昭和モダンをこよなく愛す。

宗像久嗣

宗像久嗣むなかたひさつぐ

イラスト・WEB

萌えとは程遠い創作イラストを描く中身は普通のリーマン。本業はweb業。

NEWS

2017/04/21
5/7開催 第24回 文学フリマ東京にて頒布します。ブース番号C-16でお待ちしております。
2017/04/21
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